普通の投信は「買い」オンリーなので、株価や債券価格が下がると利益は得られない。その点、ヘッジファンドは、「相場が下がっても売ればいいのだから、『絶対収益』を追求できるのも当たり前」と思うかもしれない。だが、話はそう簡単ではない。
金融危機の大暴落でヘッジファンドが勝てなかった理由は?


実際、昨年9月の「リーマンショック」以降、多くのヘッジファンドの基準価額が大幅に下落し、償還延期や停止に追い込まれるファンドも続出した。株も、債券も、商品も一挙に暴落するという「100年に一度」の下落相場は、「売り」で大儲けできるチャンスではなかったのか?

「実はショートって、非常に難しいんです。FXでも、下落局面で売り注文を出した後に、相場が急転して大損を抱えた経験のある人は多いと思いますが、ヘッジファンドもまったく同じ。しかも元手の1・5〜2倍のレバレッジ取引をするので、相場が反転すると、一気に損失が膨らんでしまうんです」と語るのは、経済アナリストの木下晃伸氏。

ショートはあくまで与えられた武器にすぎず、それを生かすも殺すも、運用者(ファンドマネジャー)の相場観や銘柄選び、どのような投資手法を組み合わせるかといった実力にかかっているようなのだ。

その投資手法には、基本的なロング・ショートのほかに、グローバル・マクロ、イベント・ドリブンなどがある。多くのファンドが金融危機で惨敗する中、唯一好調なのがマネ
ージド・フューチャーズという手法を駆使したヘッジファンド。下に紹
介した「利回りランキング」のベスト10はすべてマネージド・フューチャーズだ。1位の「チューリップ・トレンド・ファンド」は、'08年59 ・96%もの運用成績を上げている。

無謀な売買や不透明な情報開示が
あやしさを醸し出す

ところで、ヘッジファンドには、大金持ちしか相手にされないというイメージとともに、何となく怖い、危険というイメージがつきまとう。情報があまりにも少なく、たまにニュースで目にしても、投資に失敗したり、破たんしたりと、さえない話題ばかりだからだろう。

「投信のファンドマネジャーはサラリーマンですが、ヘッジファンドのファンドマネジャーは運用成績の2割が成功報酬。100億円の運用資金を10%増やせば、2億円ものカネが転がり込んでくるのです」(木下氏)

報酬欲しさにレバレッジを目いっぱい掛けたり、ボロ株を買ったりと、無謀な売買を仕掛けて惨敗することは実際にあるようだ。この貪欲さが「ハゲタカ」と呼ばれる理由だろう。

また、「もともとヘッジファンドは、限られた機関投資家や大富豪などの資産だけを運用する『閉じられた世界』なので、情報があまり開示されません。一般投資家にも手が届く一口50万〜100万円のヘッジファンドでも、運用報告書の中身が普通の投信に比べてあいまいなのは、そのせいかもしれませんね」(木下氏)。

とはいえ、すべてのヘッジファンドが無謀で、得体が知れないわけではない。意外に思われるかもしれないが、なかには満期まで保有していれば、実質的に元本が保証される商品だってあるのだ。では、実際にどのような商品が買えるのか。次回で詳しく紹介しよう。



冨田信太郎氏
ヘッジファンド、ブルーベア・インベストメント・マネジャーズ代表取締役社長。
関西学院大学卒業後、国内証券会社、HSBC証券、ゴールドマン・サックス証券などを経て’06年7月から現職。



木下晃伸氏
経済アナリスト。
中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て株式会社きのしたてるのぶ事務所設立。
アナリストとして国内上場企業1000社以上を訪問取材



小林基男氏
ファイナンシャルプランナー。
旧国際証券(現三菱UFJ証券)などを経て、'01年に投資運用アドバイスを行うファーストプレイスを設立。
近著に『サラリーマン副業ガイド』(小社刊)