[イラク]観光資源や地理的優位性など意外な魅力的要素が!



度重なる戦禍の傷跡が残り、テロ事件がいまだに頻発するイラク。一般的な投資先としては躊躇せざるを得ないが、楠和雲氏はここに「秘めたポテンシャルの高さ」を見いだした。

「戦争が終わった国はゼロから再出発するわけで、これ以上悪くなることはない。テロの回数が近年減少傾向であることを示すデータもあります」

’04年頃からイラク通貨のディナール投資の話題が盛り上がるのを見て、「それならば株取引もできるのでは」と思ったのがイラク株投資の動機だった。’09年にイラク証券取引所(ISX)で電子取引が開始した際には、独力で口座開設に取り組んだ。まずは、同取引所のホームページに掲載されていた証券会社約50社全てに英語でメールを送信した。

「レスが早く、かつこちらの質問にていねいに答えてくれたアル・カルマル社とラビー証券を選びました」

ISXはアメリカの支援で設立された取引所で、上場銘柄は約90ほど。口座開設には必要書類を揃え、現地への送金はアメリカの銀行を経由して行う。基本的な手順は、証券会社の契約書に記入、次に申請書にサインする。必須書類となるパスポートコピーには、公的機関からの認証印をもらう必要があるが、日本の行政機関はパスポートコピーの認証を行っていないため、行政書士に依頼する(公的機関でないことを理由に、まれに断られるため注意)。イラクに送金後は基本的に着金連絡がないため、こちらからメールなどで確認する必要がある。晴れて口座開設後、注文は売買する銘柄を注文書に記入し、スキャンして証券会社にメールすればOKだ。

楠氏の銘柄選びのポイントは "将来性"。「まずは上場企業のなかで多くを占める銀行。ワルカ銀行は純民間銀行ですが、本店以外に支店も持っている大きな銀行です。また、観光もイラクの魅力的な資源。古代からメソポタミア文明が栄えた地域で、平和になれば観光産業が伸びるでしょう。そのため、イスラム教の聖地に近いカルバラホテルの株なども買いました。またイラクは『肥沃な三日月地帯』と呼ばれた農業地帯の中の一つ。今後を期待して種苗会社の銘柄も保有してます」

    



リスクはあるが将来性のある銘柄も多い!



ただ、企業情報の収集がもともと困難で、業績の数値的な裏付けも少ない点がリスク。そこで楠氏は現地ニュースをチェックするほか「学校で習った世界史や地理で覚えた知識で補っている(笑)」という。

現在の投資額は「個人的に痛手の少ない額」である50万円ほど。購入した保有株の株価はまだ上がっていない状態だ。

だが、楠氏は投資するだけの魅力と価値は十分にあると話す。その一つが「機関投資家がまだ手を出せない」点だ。

「イラクは投資家からはまだリスクが高いと思われている。そのため、機関投資家が大量に売ったせいで、こちらの売りが間に合わないうちに一気に暴落するなどの危険性は少ないと思います。とは言っても、次第に機関投資家が参入してきている今がまさに変化のときです」北アフリカ諸国の政情不安を背景に、オイルマネーなどの資金の避難先となっていることも株価上昇に繫がっている。

また楠氏は「証券取引所丸ごとテロでふっ飛ばされたら『終了』なんてもことも」と苦笑いするが、その一方で、若干のテロ発生は「織り込み済み」なのか、散発的なテロくらいでは株価が下がりにくいのも強み(?)なのだとか……。未知の可能性を秘めているイラク株。戦後復興のポテンシャルに賭けてみてもいいかもしれない。



楠 和雲 氏

個人投資家。’07年の中国株下落時もピークで売り抜け、その後タイ、ドバイ、ベトナム株などを手がける。機関投資家が参入しない新興海外市場でのDIY投資を楽しむ。アフリカ株についても修業中。