冒頭でも触れたように、現在は「通貨選択型」の外債ファンドが大人気。一番のヒット商品は「野村米国ハイ・イールド債券投信」。

選べる通貨は、豪ドル、トルコリラ、南アフリカランドなどさまざまだが、最も売れているのはブラジルレアルコースだという。設定からわずか2年強の間に、純資産残高は6500億円を突破。しかも、この1年のトータルリターンは19・8%と非常に高い。

そもそも、通貨選択型はなぜこんなにも人気が出たのか。中村氏は次のように分析する。「結局は、分配金が高く、際立って高利回りだからでしょう。特有のメリットとしては"収益源が多い"ということも挙げられます」

その収益源とは「債券利回り」「為替ヘッジプレミアム」「為替差益」の3つ。通貨選択型のファンドは、ハイ・イールド債や新興国債券といった高利回りな債券を対象としたものが多い。信用リスクを負って、高い債券利回りを追求するわけだ。続く「為替ヘッジプレミアム」とは、選択した貨と実際に債券を購入する通貨の金利差を利用した、為替ヘッジによる利益。

「……といわれてもわからないですよね(笑)。

たとえば前出の野村の商品なら、投資対象が米国の債券なので、決済は米ドルです。このとき、通貨はブラジルレアルを選択しているので"ブラジルレアルで米ドルを為替ヘッジする"という作業を行うんです」(中村氏)

為替ヘッジとは、為替変動リスクを回避するために為替レートを固定すること。金利が高い通貨から低い通貨へのヘッジだと、金利差分の利益(為替ヘッジプレミアム)が得られる。いま米ドルは実質ゼロ金利なので、高金利のブラジルレアルでヘッジすると利益が大きくなる。実質的には米債券をレアル建てで持つのと同じだ。

さらに"選択する通貨と円の為替差益"も収益源となる。選択する通貨が円に対して高くなると、差益を受け取れる。ブラジルレアルが人気なのは、金利が特に高く、通貨にも勢いがあるためだ。

「こうやって見ると、一見とても儲かりそうですけど、やっぱり商品のしくみが複雑すぎですよね」

とは、内藤氏。「大原則として、しくみが複雑になればなるほど運用コストがかかっているわけですから、投資家がそのコストを負担することになります。間で手数料をどんどん抜かれますから。『しくみはよくわからないけど、儲かるならいいや』では、金融詐欺に引っ掛かる人と同じレベル。理解できないようなものは、絶対に買うべきではないと思います」

中村氏も同意見。「みんなが本当にしくみを理解したら、こんなに売れないはずですけどね。3つの収益源がありますが、裏を返せばリスクも3つ。かなり危ない橋を渡っている認識は持ってほしいです」



中村 宏氏
ファイナンシャルプランナー、ワーク・ワークス代表。個人のコンサルティングやセミナー講師、雑誌への執筆など、多方面で活躍中



内藤 忍氏
マネックス・ユニバーシティ代表。マネックス証券などを経て現職。セミナー講師も務める。新刊「貧乏は99%治る」好評発売中!